輪景備忘録

学校が始まり、登校する小学生の群れと出くわすようになった。

恐ろしいことに、どの子もどの子も、風邪をひいている。

どうやら、春休みが明けて子どもが集団生活を開始するとともに、風邪が流行りだしたらしい。

「もうねえ、熱病みたいに流行ってますよ」というのが、子どものお友だちのお母さんの言。

「熱病みたいに風邪が流行るってなんだそりゃ、って思うでしょ?それがねえ、熱病みたいに流行ってるんですよ!!うちはね、まだ下の子が保育園だから、もうそりゃあ骨身に染みてそう思うんですよ、保育園はもっとすごい」と。

ほほう、よっぽど大変なんだな、お疲れさまです、と頷いた。

そして、昨日。

我が子がせき込み始めたな、と思った。

そしてさらに、今日。

ついに私もせき込み始めてしまった。

「熱病みたいに風邪が流行る」を身をもって体験することになった。

逃れられるもんじゃあありませんでしたな、4月の熱病。

新年度が始まった。

新しいクラス、新しい先生、新しい教室。

そして新年度の始まりには、「〇日までに〇〇を持ってきてください」という指示が出る。
出まくる。

これがほんっとうに、ややこしい。

1日に何枚も持って帰ってくるプリントの、いろんなところにいろんな持ち物の指示が。
1枚にまとめてくれりゃあいいものを、なんでなの。

たくさんあるプリントにくまなく目を通し、「体育館シューズは〇日、体操服はその次の日まで。エプロンは〇日。絵具セットは×日、あ、でも、こっちのプリントには鍵盤ハーモニカが×日までって書いてあるな?じゃあこれは分散させて事前に持っていった方がベターか?同時に持っていくのはキツいでしょ」などと戦略を立てねばならない。
ヘタすると、学年だよりとクラスだよりで内容が矛盾しているときすらあるから、もうてんやわんや。

今年度の極めつけは、「音楽セットの手提げを〇日まで」という指示だった。

なぜならば、これについては、どんなものなのかが全然わからなかったからだ。
「え、音楽セットの手提げなんてもの、去年はなかったはずだけど?いったい何を入れるどんな手提げなの??」と頭を抱えた。子どもに聞いたら、「先生は何か言ってたかもしれない、言ってないかもしれない」という曖昧模糊とした返事が返ってきて、「詰んだ」と思った。

年度初めの学校のプリント、これはもう親に対する挑戦状であるのかもしれない。

新学期。

子どもが学校から、体操服のゼッケンを持って帰ってきた。

来たか。今年も。
別に来なくてもいいんだけど、まあ、そりゃ、来るか。

で、おたよりを見たら、翌日に体操服を持たせてください、とある。
すなわち、今日中にゼッケンを縫い付けろ、と。

しょうがないから、裁縫セットを持ってきてちくちく手縫い。

どうにも気分が上がらないから、録画していたEテレのソーイング・ビーを再生。
裁縫上手の出場者を見ながら作業したら、孤独感も薄れて効率も上がるかもしれぬ、と思ったのだ。

そうやって手縫いを続けて、まあなんとか、ゼッケンは縫い付け終わった。

そしてつくづく、「ソーイング・ビーの出場者、あれは皆さんバケモンですよ」と思った。
短時間であんな作品を縫い上げるって、ほんと、尋常じゃない。
ゼッケンひとつに30分かけている私からしたら、殿上人の集まりだ。

ちょっと前まで、ソーイング・ビーの影響で「ミシン欲しいかも」とか思っていた気分は雲散霧消。

うん、身の丈に合わぬ願望であったのだ、私の場合は子どものゼッケンが限界であるのだ、と思い知った。我がゼッケンをエズメやらパトリックやらが見たら、なんて言われるかわかったもんじゃない。

買う前に気づいてよかったよ、と自分を慰めている。

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